ビットコインのどこが従来貨幣より優れているのか?、ビットコインはどのように貨幣へと進化していくのか?、知っておくべきビットコインのリスクとは?
ビットコインは最強のお金 | 初級、経済学 | 35分 |
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本記事は VIJAY BOYAPATI 氏著「THE BULLISH CASE FOR BITCOIN」(2018年2月26日公開)を @TerukoNeriki が翻訳、一部加筆修正したものです。
ビットコインが物凄いスピードで過去最高価格を更新した2017年、ビットコインに強気になるべき理由など、あえて説明する必要もないほど明白に思えた。一方で、国家や特定の財に裏付けられているわけでもなく、17世紀欧州のチューリップバブルや1990年代後半の米国ドットコムバブルを彷彿させる価格急騰を演じるデジタル資産への投資は馬鹿げているようにも見えた。しかし、どちらも誤りだ。ビットコインに強気になる真の理由はもっとずっと奥深く説得力があり、しかも分かりにくい。ビットコイン投資には大きなリスクが伴う。それでも、私は現在のビットコインを一生に一度あるかないかの投資機会と捉えている。
ビットコインの起源
対面による現金決済を除き、従来、価値移転には、政府や銀行など信頼できる第三者機関の仲介が必須であった。この金融取引の大前提が、2008年にサトシ・ナカモトと名乗る人物が公開した僅か9ページのホワイトペーパーによって覆された。ナカモトはコンピューターサイエンスの長年の課題であったビザンチン将軍問題の解決策を提示するとともに、解決策を具現化したビットコインというシステムを自ら構築することで、歴史上初となる第三者機関の仲介を必要としない遠隔地への価値移転を実現した。ビットコインという発明が経済とコンピューターサイエンスに及ぼす影響は計り知れないほど大きい。ナカモトはノーベル経済学賞とチューリング賞をダブル受賞する史上初の人物になってもおかしくない偉業を達成した。
ビットコインの発明により、希少なデジタル資産という新しい金融商品が生まれた。ビットコインとは、ビットコインネットワークで「マイニング」として知られるプロセスを経て発行されるデジタルトークンを指す。ビットコインマイニングは、しばしば金採掘に例えられるが、両者には大きな違いがある。金供給は市況や採掘技術に依存するため予測不能な一方、ビットコイン供給は予め決められたスケジュールに基づくので完全に予測可能である。また、ビットコイン供給には2100万という上限が予め設定されており、本記事執筆時点(2018年3月)ですでに1680万ビットコインが発行済みだ。マイニングにより新規発行されるビットコインの数量は4年毎に半減し、2140年までにビットコイン供給は完全に停止する。
ビットコインには金などの物理財による裏付けも、政府や企業による保証もない。これを聞いた投資家は疑問を抱くかもしれない。なぜビットコインには価値があるのか?ビットコインの価値は株、債券、不動産、あるいは原油や小麦などの商品の評価に用いるDCF法や中間需要で評価することはできない。ビットコインは貨幣財という全く異なるカテゴリーに属するためだ。貨幣財の価値はゲーム理論で決まる。つまり、自分以外の市場参加者が貨幣財の価値をどう評価しているかを予測し、その予測に基づいて貨幣財に対する自らの評価を決める。貨幣財のゲーム理論的性質を理解するには、貨幣の起源に立ち戻る必要がある。
貨幣の起源
人類社会における取引は物々交換という形で始まった。しかし、物々交換は非常に効率が悪く、取引の件数も地理的範囲も極めて限定的だった。物々交換には欲求の一致の欠如という大きな問題がある。例えば、漁師とりんご農家の間での取引は、漁師がりんごを欲し、りんご農家が魚を欲している場合にのみ成立する。この物々交換の不便さを解消するため、(貝殻、動物の歯、火打ち石など)希少性と象徴的価値のあるコレクションアイテムを保有する人が次第に増えた。Nick Szaboが貨幣の起源について書いた素晴らしい論文で指摘したように、新人類(ホモ・サピエンス)とネアンデルタール人との生存競争で、新人類が進化論的優位性を確立できた裏にはコレクションアイテムの選好があった。
コレクションアイテムが進化論的見地で果たした主要かつ究極の機能は、価値の貯蔵と移転のための媒体であった。
コレクションアイテムは「貨幣の原型」とも言える。コレクションアイテムを得たことで、新人類は潜在的な敵でもある他部族との取引や、世代間の財産継承が可能になった。現代貨幣の主要機能は「交換手段」だが、旧石器時代にはコレクションアイテムの取引は非常に稀で、その主要機能は「価値貯蔵手段」であった。Szaboは以下のように説明する。
現代貨幣に比べると、原始貨幣の流通速度は極めて低かった。一般的な人は一生のうち、ほんの数回しか貨幣を移転しなかったかもしれない。にもかかわらず、耐久性が高いコレクションアイテム(今日私たちが家宝と呼ぶもの)は、何世代にも渡って受け継がれ、相続を経る毎に価値を大幅に増やした。
新人類は何をコレクションアイテムとして収集、保有するかを決める際、ゲーム理論的ジレンマ、すなわち、自分以外の人は何を欲するのか?という問いに直面した。コレクションアイテムとして価値を持ちそうな財を正確に予測できれば、取引で優位に立ち、資産を増やすことができた。アメリカ先住民のナラガンセット族のように、価値交換だけを目的とする他に使い道のないコレクションアイテムの生産に特化する部族もいた。ここで注目すべきは、コレクションアイテムの将来需要を早く正確に予測できるほど、その保有者が得る利益が大きくなることだ。安価で入手した財にコレクションアイテムとしての価値がつき、財の需要拡大に伴って価格が上昇するためである。さらに、将来、価値貯蔵手段として需要を喚起することを期待して特定の財を入手する行為そのものが、財のコレクションアイテムとしての普及を促進する。この循環性こそ、社会全体が単一の価値貯蔵手段に収束する流れを加速するフィードバックループだ。ゲーム理論で言う「ナッシュ均衡」である。価値貯蔵手段におけるナッシュ均衡の実現が社会にもたらすメリットは大きい。貿易の振興と分業の進化を通じて、文明化への扉が開かれるのだ。
それから数千年の間に、部族社会は国家へと発展し、多様な貿易ルートが確立した。その過程で、それぞれの国で選ばれた異なる価値貯蔵手段の間に競争が生まれた。すると、貿易業者は取引の決済に使う価値貯蔵手段の選択を迫られた。自国または取引相手国の価値貯蔵手段か、あるいは両者の併用か。貿易業者は外国の価値貯蔵手段を入手することで、その国での取引を優位に進められる。さらに、外国の価値貯蔵手段を保有する者には、その財の自国での価値貯蔵手段としての普及を促すインセンティブが働く。自国での需要が増え、財の価値が上昇すれば、価値貯蔵手段に保管する財産の購買力が高まるためだ。外国の価値貯蔵手段を保有する国民が増えることは、社会にとっても有益である。共通の価値貯蔵手段を持つ国では、貿易コストが大幅に削減され、結果的に貿易利益が増加する。実際、世界が初めて金という単一の価値貯蔵手段を共有した19世紀は、歴史上最も貿易が拡大した時代であった。ケインズはこの繁栄の時代を以下のように表現している。
19世紀が経験した経済発展には驚くばかりだ。人口の大半が能力に秀でた人格者で、中流または上流階級に属し、史上最大権力を誇った君主の時代よりも高い生活水準を安価に享受できた。ロンドンの住人はベッドで朝の紅茶を飲みながら、世界中から好きな商品を好きなだけ電話で注文でき、それほど長く待たされることなく自宅の玄関先まで届けてもらえた。
優れた価値貯蔵手段の要件
価値貯蔵手段の王座を賭けた競争が始まった。この競争過程で優れた価値貯蔵手段、すなわち、時間の経過とともに需要が拡大し価値が上昇する財の特徴が明らかになった。これまで価値貯蔵手段として使われた多様な財の中で、競争を勝ち抜いて需要を大きく伸ばした財は以下の特徴を持つ。
- 耐久性:劣化、腐敗しにくく、簡単には消滅しない。つまり、お米は価値貯蔵手段には不向きである。
- 携帯性:保管、移動が容易で紛失、盗難リスクが低く、遠隔地との取引決済手段に適する。例えば、金のネックレスは牛よりも優れている。
- 代替性:同じ財であれば個体間の質的区別はなく、常に同量交換が保証される。これが保証されない財には、欲求の一致の欠如という問題が残る。すなわち、形状と品質にばらつきがあるダイヤモンドより金の方が優れている。
- 検証性:本物か偽物かを容易に判定できる。過去に繰り返し本物であることが証明された財は支払い手段として受取人からの信用度が高いため、取引を円滑化、迅速化する。
- 可分性:簡単に小単位に分割できる。社会が未発達で取引頻度が少ないうちは、この重要性は低いが、社会が成熟し取引が活発化すると、必要時に必要量を入手できるようになり、取引が小口化するために重要性が高まる。
- 希少性:Nick Szabo曰く、貨幣財は「偽造できない価値」を持つ必要がある。すなわち、数量が限定的で大量生産が困難でなければならない。価値貯蔵手段にとって最も重要な特徴はおそらくこれだ。希少なものを保有したいという人間の本能を刺激するためである。価値貯蔵手段の価値源泉は希少性とも言える。
- 実績:財の価値が社会に認知されている期間が長くなるほど、価値貯蔵手段としての訴求力は増す。長期にわたり価値貯蔵手段として機能した財を代替するには、新しい財は従来財に対して上記性質で大きな優位性を示すか、暴力などの強制的手段に訴える必要がある。
- 検閲耐性:社会のデジタル化が進み、政府や企業が市民生活を広範囲にわたって監視できるようになった今、この重要性は急速に高まっている。検閲耐性のある財は政府や企業などの第三者機関が所有、使用を禁じるのが難しい。資本規制を採用する国、貿易が厳しく管理統制されている国の居住者にとって、検閲耐性のある財は理想的な価値貯蔵手段である。
下表は上記特徴に対するビットコイン、金、(ドルなどの)法定通貨の評価を示す。
耐久性
三つの中で最も耐久性が高いのは金である。古代エジプトのファラオの黄金をはじめ、これまで採掘、鋳造された金はその大半が現存し、今後も消滅しないだろう。ローマ時代に鋳造された金貨は現在も価値をほとんど失っていない。有形の金と異なり、法定通貨とビットコインは本質的には無形の電子データだが、(紙幣、硬貨などの)物理形態をとることもある。ボロボロになった紙幣は新紙幣と交換可能なことから、法定通貨とビットコインの耐久性は財の価値を投影した物体そのものの耐久性ではなく、それを発行する組織の耐久性で評価すべきだ。法定通貨の場合、発行体は政府である。政府がめまぐるしく変わる度、通貨は一新される。ドイツワイマール共和国のパピエルマルク、レンテンマルク、ライヒスマルクは発行政府の消滅と同時に無価値の紙切れと化した。歴史を教訓にするなら、法定通貨に長期的耐久性があると考えるのは愚かだ。米国ドルと英国ポンドは例外的と言える。ビットコインは発行体を持たないため、ビットコインネットワークが稼働する限り価値を持つと考えられる。しかし、ビットコインの歴史はまだ浅く、耐久性について結論を出すのは時期尚早だろう。しかし、度重なる国家やハッカーの攻撃にもかかわらず、ビットコインネットワークが一度も停止することなく稼働し続けている事実はビットコインの反脆弱性(不利な状況を逆手に取って利する能力)の証と言ってもいいだろう。
携帯性
これまで価値貯蔵手段として機能した財の中で、ビットコインは携帯性に最も秀でている。ビットコインの所有権を証明する秘密鍵は小さなUSBメモリに保存できるため、億単位の大金も簡単に持ち運べる。さらに、地球の裏側にいる人に宛てた多額の送金も10分程度で完了する。本来、電子データである法定通貨も可動性は高いが、政府規制のせいで大口送金は通常数日を要し、資本規制が課されている国では送金すらできない。現金であれば資本規制回避も可能だが、現金の保管リスクと移送コストは高い。金は有形で、しかも非常に高密度なことから、携帯性は著しく劣る。金地金の大半が一度も動かされることなく金庫に保管されたままなのも当然だ。一般的に金地金取引では、金地金そのものではなく、その所有権が売り手から買い手に移行するだけだ。金地金の輸送はリスクとコストが高く、時間もかかるためである。
代替性
金は代替性が非常に高い。金含有量20グラムの宝飾品や金貨は溶解してしまえば、他の20グラムの金と全く区別がつかない。金が常に重量単位で取引される所以だ。法定通貨の場合、代替性は発行体に依存する。例えば、インドでは課税回避が横行する闇市場を撲滅するため、政府が500ルピー紙幣と1000ルピー紙幣の廃貨を突然宣言した。この結果、両紙幣を小額紙幣に交換する人が殺到、500ルピー紙幣と1000ルピー紙幣が額面よりも安く取引される事態となり、小額紙幣との代替性が損なわれた。また、通常、どの紙幣も同じように支払いに使えるが、高額紙幣は偽札ではないかチェックを受けるなど小額紙幣と異なる扱いを受けることもある。ビットコインはビットコインネットワーク上では代替性が保証されている。つまり、ビットコインネットワーク上で送金されたビットコインは全て同じであるとみなされる。しかし、ビットコインはその取引履歴がブロックチェーン上で追跡可能なため、違法取引に使われたことがあるビットコインが汚れたビットコインとして取引所や店舗から受け取り拒否される可能性もある。ビットコインが金と同等の代替性を持つには、プロトコルレベルでの匿名性とプライバシーの改善が必要だ。
検証性
大抵の場合、法定通貨が本物かどうかは簡単に判定できる。しかし、紙幣には偽造防止策が幾重にも施されているにもかかわらず、政府と国民が騙されるリスクはゼロではない。金もまた偽造問題を抱えており、金めっきされたタングステンで投資家を騙す詐欺が報告されている。一方、ビットコインの真正は数学的確実性を持って検証できる。また、ビットコインの所有権は公開鍵暗号の秘密鍵の署名で証明可能だ。
可分性
1ビットコインは1億サトシという小単位に分割できるため、極めて少額の決済にも利用可能だ(ただし、取引手数料がかかるため少額決済には向かない)。法定通貨も5円、1円といった何も買えないくらい少額に分割できるので可分性は高い。金は物理的に分割可能なものの、日常の少額決済に使用可能なほど少量に分割することは難しく、可分性は劣る。
希少性
ビットコインを金、法定通貨と明確に差別化する特徴がこれだ。ビットコインは供給上限が2100万に設定されており、2100万枚発行後は供給が完全停止するよう設計されている。このため、10ビットコインを保有する人は、同量のビットコインを保有する人が地球上に210万人(世界人口の0.03%)以下しかいないことを知っている。金は歴史を通して極めて希少とされてきたものの、供給拡大が不可能なわけではない。新しい採掘技術が低コストで利用できるようになれば、(例えば、海底や惑星で採掘が始まり)金の供給量が急増する可能性もある。法定通貨の歴史は金に比べるとずっと短いが、供給が継続的増加傾向にあることはすでに実証されている。政府は目の前にある問題を解決するために通貨供給を増やす癖がある。通貨膨張癖は世界中の政府に共通するため、法定通貨保有者である国民の貯蓄は時間の経過とともに目減りする運命から逃れられない。
実績
貨幣財としての歴史は金が圧倒的に長く、文明社会の始まりにまで遡る。ローマ時代に鋳造された金貨は現在でもほとんど価値を失っていない。法定通貨はまだ歴史が浅く、貨幣財としては特異である。ただ、その短い歴史からも、世界中の法定通貨は最終的に無価値になると予測できる。国民が課税されている実感を持ちにくい狡猾な徴税手段として通貨膨張を利用する誘惑に打ち勝った国家は歴史上ほぼ皆無だからだ。法定通貨が国際貨幣秩序を支配した20世紀から私たちが学ぶべき経済的教訓は、法定通貨は価値を長期的、いや中期的にすら保持できないことだ。ビットコインは法定通貨よりさらに歴史は浅いが、(市場テストを迂回し法令という強制力で通用する)法定通貨とは異なり、市場テストを無事通過しており、価値貯蔵手段として中長期的に機能する確率は高い。さらに、リンディ効果が示すように、ビットコインが社会に存在する期間が長くなるにつれて、人々はビットコインが今後も存続するという確信を深める。新しい貨幣財に対する社会的信用は下図のように漸近的に高まっていく。
もしビットコインが20年間存続できれば、永久に存続すると考える人が大半を占めるようになるだろう。今、現代社会の重要インフラとしてインターネットが永久に存続すると考える人が大半なように。
検閲耐性
ビットコイン初期の主な用途の一つは違法ドラッグの購入であった。ビットコイン取引は一見、匿名性が高いため、犯罪を助長すると多くの人が誤解した。しかし、実際にはビットコインの匿名性は高くはない。ビットコインネットワーク上で行われた取引は全てブロックチェーンに刻まれ、全世界に公開される。取引記録を過去に遡って分析すれば、資金の出所を突き止めることも可能だ。有名なマウントゴックス攻撃の犯人逮捕もこのような分析のおかげである。注意深く入念な手順を踏むことで匿名性を高めることはできるが、ビットコインが違法ドラッグ取引で多用された理由は匿名性ではない。ビットコインが違法取引で重宝されるのは「誰の許可も必要としない」からだ。ビットコインは送金されてから受取人に届くまでの間、人的介入が一切ない。つまり、送金を許可または差し止める権限を持つ者が存在しないのだ。P2P分散ネットワークであるビットコインには検閲耐性がある。この対極にあるのが現代法定通貨時代の銀行や金融取引仲介業者である。政府規制に縛られ、犯罪(に関連する疑いのある)資金の報告、差し止めが義務付けられている。資金移動制限措置の典型例が資本規制だ。資本規制採用国に住む資産家は抑圧的政府から逃れたくても、資産を新たな居住地に移動することが極めて困難である。金は国家に依存しないものの、現物の長距離輸送はリスクもコストも高い。金はビットコインよりも国家規制の影響を受けやすい。インドの金規制法はその一例である。
以上、優れた価値貯蔵手段の要件と、それに対するビットコイン、金、法定通貨の評価だ。ビットコインは大半の要件で金、法定通貨よりも優れている。古代からの貨幣財と現代の貨幣財、両者に勝っているのだ。この事実はビットコインの普及を大きく後押しするだろう。特に絶対希少性と検閲耐性を併せ持つことは富裕層にとって大きな魅力であり、資産の一部を新しい資産クラスに配分する動きの原動力となっている。
貨幣の進化
貨幣には価値貯蔵手段、交換手段、価値尺度という3つの機能がある。にも関わらず、現代経済学は貨幣の交換手段機能ばかり強調する傾向がある。20世紀、国家は貨幣発行権を独占すると、価値貯蔵手段機能を継続的に弱めると同時に、貨幣の主要機能は交換手段であるという誤った考えを広めた。ビットコイン批判の定番に、価格変動が激しすぎて安定的交換手段にはなり得ないというものがある。しかし、これは本末転倒だ。財が貨幣に進化する過程は段階的で、貨幣化の最初の段階は常に価値貯蔵手段としての普及である。財は価値貯蔵手段として広く普及した後、初めて交換手段機能を担うようになる。限界効用理論の確立に貢献した経済学者Stanley Jevonsは金が貨幣に進化した過程を以下のように述べている。
歴史的に言えば、金はまず宝飾品としての価値を認められ、次に価値貯蔵手段、続いて交換手段、最後に価値尺度と順に機能を拡張していったようだ。
財の貨幣化プロセスは以下4段階から成る。
1. コレクションアイテム:貨幣化の第1段階では、財の特性が貨幣需要を喚起する。ここで言う特性とは、例えば、美しい、珍しいなど人々の興味、収集意欲を掻き立てるものを指す。貝殻もビーズも金も貨幣として機能する以前はコレクションアイテムであった。
2. 価値貯蔵手段:財の特性に対する需要が一巡すると貨幣化の第2段階に移行し、財は価値を長期にわたり保持、貯蔵するための媒体として利用されるようになる。財が価値貯蔵媒体に適しているとの認識が社会に広がるにつれ、価値貯蔵目的で財を求める人が増え、財の購買力は高まる。財が価値貯蔵手段として普及し需要が落ち着くと、財の購買力も安定する。
3. 交換手段:財の購買力が上昇している間は、財を支払いに使ってしまうと将来増大が期待できる購買力を享受する機会を失う。すなわち、機会費用が発生する。財の購買力が安定すると機会費用も低水準で安定するため、交換手段としての財の利用が促される。ビットコイン誕生当初、この機会費用を認識する者はほとんどいなかった。2010年、ソフトウェア開発者Laszlo Hanyeczはピザ2枚(3,000円相当)を1万ビットコインで購入した。本記事執筆時点で1万ビットコインは94億円に相当する。彼が支払った機会費用は莫大だ。
4. 価値尺度:財が交換手段として広く通用するようになると、貨幣化プロセスの最終段階に入る。ここでは、商品やサービスの価格が財を基準に、すなわち、財との交換比率で表示されるようになる。今日、ビットコインで購入可能な商品やサービスは増えている。しかし、これはビットコインが価値尺度となったことを意味するわけではない。例えば、コーヒーをビットコインで購入する場合のビットコイン価格とは、日本円で表示されたコーヒー価格を支払い時の交換レートでビットコインに換算した金額である。つまり、ビットコインで表示される価格は固定ではなく、ビットコインが日本円に対して下がれば、ビットコイン建てのコーヒーの価格は上がる。ビットコインと法定通貨の交換レートに関わらず、商品やサービスの提供者がビットコインでの支払いを喜んで受け取るようになって初めてビットコインは価値尺度になり得る。
貨幣3機能の一部しか果たさない財は「部分的に貨幣化」された財とみなすことができる。現在の金はこれに該当する。価値貯蔵手段ではあるものの、交換手段と価値尺度の機能は政府によって無効にされた。また、ある財が価値貯蔵手段として利用され、別の財が交換手段として通用することも、アルゼンチンやジンバブエなど経済機能不全に陥った国ではよくある。Nathaniel Popperは著書「デジタル・ゴールド」に以下のように記している。
米国では、ドルは常に貨幣の3つの機能、すなわち、交換手段、商品価値を測る尺度、価値貯蔵できる資産を提供する。しかし、アルゼンチンでは、ペソは交換手段として日常の買い物で使われるものの、価値貯蔵手段として使う者は皆無である。(急速に減価する)ペソでの預貯金はお金をドブに捨てるようなものだからだ。人々は預貯金に回すペソを価値保持に優れた米国ドルに交換する。また、ペソは変動が激しいため、人々は商品価格をドルで記憶する。ドルはペソよりも信頼性の高い価値尺度なのである。
現在、ビットコインは貨幣化プロセス第1段階のコレクションアイテムから第2段階の価値貯蔵手段への進化途上にある。ビットコインが価値貯蔵手段として普及し、交換手段として機能するようになるのはまだ数年先の話だ。しかも、その過程には大きなリスクと不確実性が伴う。金は価値貯蔵手段から交換手段に進化するまでに数世紀を要した。今生きている人の中で財の貨幣化をリアルタイムで見た者はいない。ビットコインの貨幣化プロセスに立ち会えるということは非常に貴重な体験なのである。
経路依存
財は貨幣となる過程で購買力を急激に増す。ビットコイン価格が暴騰、すなわち、ビットコインの購買力が急上昇した際、多くの人が「バブル」という言葉を使ってビットコインは過剰評価されていると批判した。これは実に的を得ている。過去の貨幣財はみな、財の利用価値(財を保有または消費することで得られる効用)では到底正当化できない購買力の急上昇を経験している。しかも、貨幣財にはそもそも利用価値がないものも多い。貨幣財の利用価値と購買力のギャップは「貨幣プレミアム」と見なすことができる。貨幣プレミアムは、財が上記貨幣化プロセスの段階を経るごとに大きくなる。ただ、貨幣プレミアムの増え方は一律ではないため、事前に予測することはできない。貨幣化途上にある財Xが競合財Yに貨幣適性で劣ることが判明すれば、財Xの貨幣プレミアムが縮小または消失することもある。19世紀、世界中で金が貨幣に選択され、銀が廃貨となった際、銀は貨幣プレミアムの大半を失った。
貨幣財間競争や政府介入などの外的要因がない場合でも、貨幣化途上にある財の将来の貨幣プレミアムを予測することは不可能だ。経済学者Larry Whiteは以下のように述べている。
バブルという表現の問題点は、どんな価格動向にも当てはまることだ。それ故に、特定の価格動向を解明する上では全く役に立たない。
貨幣化プロセスはゲーム理論的である。市場参加者は他の参加者の選好から貨幣財の総需要を見積もり、それを基に将来の貨幣プレミアムを予測しようとする。貨幣プレミアムは財の利用価値とは無関係なため、市場参加者は貨幣財が割安か割高か、買いか売りかの判断材料として過去の価格を参照する傾向がある。このように現在の需要を過去の価格に関連づけることを「経路依存」と呼ぶ。そして、この経路依存が貨幣財の価格動向を理解する上で混乱の元凶となっている。
貨幣財は普及に伴って価格が上昇する。すると、市場参加者の「割安」「割高」の判断基準に変化が生じる。同様に、貨幣財価格が暴落すると、市場参加者は過去の価格が「非合理的」または過剰評価だったと見方を改める。ウォール街の著名ファンドマネージャーJosh Brownは貨幣の経路依存を以下のように表現する。
私が(ビットコインを)2300ドルで購入すると、直後に価格は2倍に跳ね上がった。すると、私は価格が上がってしまったために「買い増すことができない」と考えるようになった。こう考える根拠としては、前回購入した際の価格がたまたま2300ドルだったという以外に何もないにも関わらずだ。そして、先週、中国政府が取引所規制に乗り出すと、価格は下落に転じた。すると、私は「いいぞ、大暴落すればいい。そうすれば買い増せる。」と考えるようになった。
上記から分かるように、貨幣財に対する「割安」「割高」という判断は本質的に無意味である。貨幣財の価格とは、財の利用価値や財が生むキャッシュフローの反映ではなく、貨幣の3つの機能の普及度合いを測る尺度なのだ。
貨幣財価格の経路依存という性質をさらに複雑にするのが市場参加者の特異性である。貨幣財市場の参加者は客観的立場で冷静に将来の貨幣プレミアムを予測して財を売買する投資家であると同時に、貨幣財の熱心な支持者かつ伝道師でもある。貨幣プレミアムには正解がない。そのため、利用需要やキャッシュフローで価格が決まる一般的な財と異なり、貨幣財では財の優位性を周囲の人々に説く普及活動の価格押し上げ効果が高い。インターネット上のフォーラムやSNSには、まるで宗教の布教活動のようにビットコインを語る伝道師が大勢いる。彼らはビットコインの利点とビットコイン投資で得られる経済的リターンを熱心に説明する。こうしたビットコイン市場の特徴をLeigh Drogenは以下のように述べている。
あなたはこれが宗教であると気づくだろう。宗教とは、私たちが合意したストーリー、相互に語り合うストーリーである。(ビットコインに適用すべきは)宗教の普及曲線だ。ほぼ完全に一致する。入信した者はみな即座に知人への布教活動を始める。新たに入信した知人もまたすぐに布教活動を開始する。
宗教を例えに使うと、ビットコインは不合理な信仰という印象を与えるかもしれない。しかし、自ら保有する優れた貨幣財の普及を促す活動は極めて合理的と言える。貨幣はあらゆる取引と貯蓄の基礎になる。優れた貨幣が普及する社会は富の創造と増殖という点で、そうでない社会より圧倒的優位に立てる。
貨幣化プロセスの形状
財が貨幣になるまでの過程は画一的ではないが、短いながらもビットコインがこれまで辿ってきた経路には興味深いパターンが見られる。ビットコイン価格はフラクタル(自己相似性)図形を繰り返し描くように推移してきた。しかも、それは反復の度に拡大する。何より興味深いのは、ビットコイン価格が描くフラクタル図形がガートナーのハイプサイクルに一致していることだ。
Michael Caseyは「ビットコインの普及と価格に関する推論」において、革新的技術は(イノベーター理論の)普及S字曲線をガートナーのハイプサイクルを反復しながら辿り普及していくと主張する。
米国家庭における新技術の普及率 — 縦軸: 普及率; 横軸: 時間
ガートナーのハイプサイクルは新技術に対する熱狂から始まる。「黎明期」において「リーチ可能な」層から市場参入者が相次ぐことで価格が急騰する。黎明期の投資家の特徴は新技術の革新性を強く確信していることだ。こうした技術の将来性に賭ける投資家の新規参入が徐々に減り、目先の利益追求を目的とする投機筋が市場を支配するようになると「『過度な期待』のピーク期」に達する。
ピーク期を過ぎると価格は暴落、ハイプサイクルは幻滅期に移行する。市場の投機熱は冷め、投資家は失望と技術実用化への疑念から市場を去る。そして、技術の将来性を確信する黎明期初期の投資家しか市場にいなくなると価格は底を打つ。しばらくすると、価格下落に耐えられるリスク許容度の高い投資家や技術の重要性を評価する投資家が新規参入してきて価格は安定する。
Caseyが「安定して退屈な安値圏」と称するフェーズに入るが、これは長期化することも多い。この時期、一般投資家は関心を失うが、技術の可能性を信じる一部エンジニアは黙々と技術改良に励み、技術は着実に進化する。こうした努力が実を結ぶと、ハイプサイクルは「啓発期」に移行する。それまで様子見姿勢だった投資家が技術開発が継続していること、技術実用化が見えてきて以前より投資リスクが低下していることを認識する。技術の採用事例が増えて普及が進むと、ハイプサイクルの最終フェーズ「生産性の安定期」に入る。
ハイプサイクルに参加する投資家でさえ、将来の価格動向を正確に予測できる者はいない。しかし、ピーク期の価格は往々にしてハイプサイクル黎明期の投資家が馬鹿げていると感じざるを得ない水準まで高騰する。幻滅期に入ると、この常軌を逸した価格暴騰が価格暴落を引き起こしたとしてメディアから非難される。確かに、実態から乖離した価格も一因かもしれないが、価格暴落の根本的原因は黎明期からピーク期においてリーチ可能な層から市場に新規参入する投資家の流れが止まることである。
金は1970年代後半から2000年代にかけて、ガートナーのハイプサイクルを忠実に辿った。ハイプサイクルは財の貨幣化に対する社会の自然な反応を可視化したものと言えるかもしれない。
ビットコインハイプサイクルの参加者
最初のビットコイン取引所が開設された2010年以降、ビットコイン市場はガートナーのハイプサイクルを4度経験した。以下、過去のハイプサイクルの価格帯と主な参加者である。
0円〜100円(2009年〜2011年3月): 最初のハイプサイクルの参加者はサトシ・ナカモトの発明の重要性を理解するのに必要な素養を備え、ビットコインプロトコルに技術的欠陥がないことを自ら検証できた暗号学者、コンピュータサイエンティスト、サイファーパンクが中心であった。
100円〜3,000円(2011年3月〜2011年7月): 2度目のハイプサイクルの主役は新技術のアーリーアダプターと国家に依存しない貨幣の可能性に惹かれた投資家であった。Roger Verをはじめとするリバタリアンはビットコインの普及が現体制転覆につながるかもしれないという可能性に興奮した。シリコンバレーに広い人脈を持つシリアル起業家Wences Casaresは有力技術者、投資家にビットコインを紹介した功労者として知られている。
2,500円〜110,000円(2013年4月〜2013年12月): 当時はまだビットコイン購入ハードルが非常に高く、流動性リスクの大きい取引所で恐ろしく複雑な手順を踏む必要があった。3度目のハイプサイクルで参入してきたのは、こうしたリスクと手間を厭わない逞しい一般投資家と機関投資家であった。この時期、市場に流動性を提供していたのは日本に拠点があった取引所マウントゴックスだった。しかし、マウントゴックス運営者Mark Karpelesは無能な上に不正行為に手を染め、後に取引所破綻の責任を問われて刑に服することになる。
上記3回のハイプサイクルでは、ビットコインの流動性上昇と購入ハードル低下が価格を押し上げてきた。最初のハイプサイクルでは取引所すらなく、ビットコインを入手するには、自らマイニングするか、ビットコイン保有者から直接買うしかなかった。2度目のハイプサイクルでは取引所はあったものの、まだ使い勝手が悪く、技術に通じた一部の投資家を除き、ビットコイン購入と保管の難易度は極めて高かった。これは3度目のハイプサイクルでもほとんど改善されず、投資家はまずマウントゴックスへの国際送金という難関を突破しなければならなかった。マウントゴックスへの送金に応じない銀行も多かったため、別の仲介業者の利用を余儀なくされたが、それらは往々にして無能、詐欺師、またはその両方であった。マウントゴックスへの送金に成功した人でさえ、その多くは取引所がハッキングを受け2014年2月に突然閉鎖した際に資産を失うことになった。
マウントゴックス破綻後、2年にわたり市場は停滞した。その間、GDAXやCumberlandといった規制要件を満たした合法的な取引所やOTCデスクが整備され、市場流動性は大幅に改善された。2016年に4度目のハイプサイクルが始まる頃には、一般投資家でも比較的容易にビットコインを購入し安全に保管できる環境が整った。
110,000円〜1,960,000円(2016年〜?): 本記事執筆時点で、ビットコイン市場は4度目のハイプサイクルにある。現サイクルの主役はMichael Caseyが「アーリー・マジョリティ(初期多数採用者)」と呼ぶ一般投資家と機関投資家である。
流動性が高まったことで、機関投資家は規制当局が監督する先物市場を介してビットコイン市場に参加できるようになった。先物市場の整備と成功はビットコインETF承認に向けた布石となる。ビットコインETFの誕生は「レイト・マジョリティ(後期多数採用者)」と「ラガード(採用遅滞者)」の参入を促す起爆剤となるだろう。
現ハイプサイクルの価格帯を正確に予測することはできないが、高値は200万円〜500万円というのが現実的だろう。これを大きく上回ることがあれば、ビットコインの時価総額は金に迫る(本記事執筆時点では、ビットコイン価格が約3,800万円になると時価総額で金に並ぶ)。ただ、金の時価総額は中央銀行の需要に支えられているため、中央銀行または国家が現ハイプサイクルでビットコイン市場に参入することは考えにくい。
国家の参入
ビットコインの最終ハイプサイクルは、ビットコインを外貨準備金として入手する国家の出現で幕を開ける。ビットコインの時価総額は現時点ではまだ小さすぎて、準備金としての採用を真剣に検討する国はほとんどない。民間部門からの投資が今後も継続し、時価総額が100兆円規模に近づけば、国家が参入するに足る流動性が確保できる。どこかの国がビットコインの準備金採用を公表すれば、追随する国が相次ぐだろう。将来、ビットコインが国際準備通貨になった場合、他国に先駆けてビットコインを購入した国は莫大な利益を得る。残念ながら、最初にビットコイン採用に踏み切るのは北朝鮮のような独裁国だろう。欧米諸国は独裁国がビットコインのおかげで金融財政状況を改善することへの不快感と、民主主義ゆえに強権的措置が取り難いことから、ビットコイン採用に躊躇し、ラガード(採用遅滞者)となることが予想される。
現在、ビットコイン規制に関しては、中国とロシアが最も厳しく敵対的で、米国は最も寛容な国の一つである。これは実に皮肉だ。米国にとってビットコインとは、ドルから国際基軸通貨の座を奪うかもしれない地政学的脅威である。1960年代、フランス大統領シャルル・ド・ゴールは1944年のブレトンウッズ協定に基づく国際金融秩序が米国に「過度な特権」を与えていることを批判した。今のところ、ロシアと中国はビットコインが自国に及ぼす悪影響を抑えることに必死で、ビットコインを準備通貨に採用する地政学的メリットを認識していない。米国の過度な特権の是正策として、1960年代に金本位制復活を提唱したド・ゴールのように、中国とロシアはどの国にも属さない中立的な価値貯蔵手段で準備金を保有するメリットに間もなく気づくだろう。これを実践に移す上で、ビットコインのマイニング施設が集中する中国は既に有利な立場にある。
米国はイノベーションの国であることに誇りを持っている。シリコンバレーは米国経済の重要資産であり、ビットコイン規制方針に関する当局の議論にも大きな影響力を持つ。他方で、中央銀行である連邦準備制度理事会と金融業界はビットコインが国際準備通貨ドルを代替する脅威、すなわち、自らの存在意義が脅かされることに不安を感じ始めている。連邦準備制度理事会の広報担当とも言えるウォールストリートジャーナルも、ビットコインの脅威に言及している。
ビットコインが崩壊せず、このまま存続するかもしれないという可能性は連邦準備制度と規制当局にとっては深刻な脅威である。ビットコインに対する投機熱がドル代替貨幣としての普及の予兆であるとしたら、連邦準備制度理事会が独占的貨幣発行特権を失う脅威に直面するのは時間の問題だ。
ビットコインの独立性を維持し、政府介入を最小限に抑えようとするシリコンバレーの技術者と起業家。既存金融制度の崩壊と貨幣発行独占権の喪失を回避するために全力でビットコイン規制を訴える金融機関と中央銀行。今後数年にわたり、シリコンバレーと金融業界はビットコイン規制をめぐり激しい論争を繰り広げることが予想される。
交換手段への進化
貨幣財はその価値が社会に広く認知されて初めて一般的受領性を持つ(現代「貨幣」の主要機能である)交換手段になれる。価値が認知されていない財を支払手段として受け取る人はいないので当然だ。貨幣財は価値が認知される過程、すなわち、価値貯蔵手段から交換手段に進化する過程で購買力が大幅に高まる。そのため、この過程にある貨幣財を支払いに使うと、将来増大が期待できる購買力を放棄するという機会費用が生じる。価値貯蔵手段を支払手段として使用する際の機会費用が適切な水準に低下するまで、貨幣財は一般的受領性を持つ交換手段にはなれない。
より厳密に言うと、貨幣財は支払いに使用する際の機会費用と取引費用の合計が、別の支払手段を使用する際の費用を下回るようになって初めて交換手段として機能し得る。
ただし、物々交換社会では、貨幣財が価値貯蔵手段として購買力を伸ばしている最中であっても交換手段として使われることがある。これは物々交換の取引費用が極めて高いからだ。経済が発達するにつれて取引費用は低下するが、取引費用が低い社会でも、ビットコインのように購買力上昇中の貨幣財が交換手段として使用されることがある。非常に稀ではあるが、違法ドラッグ市場はその一例だ。買い手は法定通貨によるドラッグ購入に付随するリスクを回避するため、ビットコインの潜在的購買力を放棄することを厭わない。
現代法定通貨社会では、ビットコインのような新しい貨幣財が_一般的受領性_を持つ交換手段へと進化する過程には巨大な制度障壁が立ちはだかる。国家は自国通貨が競合貨幣財に代替されるリスクを排除するため、課税という強力な手段に訴える。国は納税手段を自国通貨に限定することで、通貨に対する一定需要を確保できる。しかし、真の意図は競合貨幣財で行う取引を課税対象とすることで、貨幣財を交換手段として使用するコストを引き上げ、価値貯蔵手段から交換手段への進化を阻むことである。
国家は市場が選んだ貨幣財に不当なハンディを課すことはできるが、交換手段への進化を止めることはできない。法定通貨は国民の信用を失えばハイパーインフレーションを起こし、最終的に無価値の紙切れと化す。ハイパーインフレが起きると、まず金や(国内で入手可能であれば)米国ドルのように流動性の高い財に対する通貨価値が暴落する。こうした財が国内で入手困難な場合、不動産や(貴金属、農作物などの)商品といった実物財の価格が暴騰する。ハイパーインフレの象徴と言えば、空の棚が並ぶスーパーマーケットだろう。国民は急激に減価する通貨を価値保全に優れた別の財に交換しようと手当たり次第に商品を買い漁る。
ハイパーインフレで法定通貨の信用が完全に失われると、通貨を支払手段として受け取る者がいなくなり、社会は物々交換に逆戻りするか、別の貨幣が交換手段機能を果たすようになる。ジンバブエドルが米国ドルに置き換えられたのはこの一例だ。しかし、自国通貨を外貨で代替するには、外貨アクセスが限られていること、流動性確保に不可欠な外国金融機関が国内にないことなど様々な問題があり、実現は容易ではない。
ハイパーインフレを起こした国の居住者にとって、銀行を介さずに手軽に海外送金ができるビットコインは理想的貨幣財である。国が従来の緩和的金融政策を改めず、今後も法定通貨が無価値化への道を突き進むとしたら、世界中の貯蓄の逃避先としてビットコインの人気は一層高まるであろう。法定通貨が放棄され、ビットコインに置き換えられる時、ビットコインは価値貯蔵手段から交換手段に進化する。Daniel Krawiszはこのプロセスを「Hyperbitcoinization(ハイパービットコイン化)」と名付けた。
ビットコインに関するよくある誤解
ビットコインはバブル
ビットコインに限らず、市場で選ばれた貨幣財には貨幣プレミアム(財の利用価値から導かれる価格と市場価格の差額)がつくのが常だ。ビットコインは「バブル」という批判はこの貨幣プレミアムに由来する。しかしながら、貨幣プレミアムは過去の_貨幣財全て_に共通するもので、貨幣を貨幣たらしめる特徴でもある。貨幣財は常にバブルにあると言ってもよい。逆説的ではあるが、貨幣財はバブルでもあり、貨幣としての普及初期段階では過小評価されることもある。
価格変動が激しすぎる
ビットコインの価格変動が大きいのはその新しさ故である。誕生から数年間、ビットコインはまるでペニー株のようにWinklevoss兄弟をはじめとする大口投資家の売買で価格を急変動させた。しかし、ビットコインの普及とともに流動性が高まるにつれて価格変動は縮小した。将来、ビットコインが時価総額で金に並ぶ頃には、価格変動も金と同水準に落ち着くであろう。さらに、ビットコインが時価総額で金を凌ぐ頃には、交換手段としての利用にふさわしい安定価格を実現できるだろう。第3部で見たように、ビットコインはガートナーのハイプサイクルを反復しながら貨幣へと進化する。価格変動はハイプサイクルの「ピーク期」および「ピーク期」から「幻滅期」への移行期に最大、「生産性の安定期」に最小となる。ただし、ハイプサイクルを繰り返す毎に市場流動性は高まるため、価格変動は徐々に縮小する。
送金手数料が高すぎる
ビットコインの送金手数料が上がり始めると、手数料が高すぎるのでビットコインネットワークは決済システムにはなれないという批判が出てきた。しかし、送金手数料の上昇は初めから予想されていたことであり、ネットワークの健全性の証とも言える。手数料は送金指示の正当性(送金人が送金額相当のビットコインを保有しているかなど)を検証し、ネットワークを安全に保つマイナーへの対価として支払われる。マイナーは送金手数料の他にもブロック報酬を得る。ブロック報酬とは、マイニングで新規発行されるビットコインのことで、ビットコイン保有者全員がインフレという形で支払うマイナー助成金のようなものだ。
ビットコインは総供給量が2100万と予め決まっているため、インフレとは無縁の理想的価値貯蔵手段として使われるようになった。この供給上限は2100万ビットコイン発行後にブロック報酬がなくなることを意味する。つまり、ネットワークを安全に保つマイナーの収入源は送金手数料だけになる。送金手数料が「安い」とネットワークの安全性と検閲耐性が維持できなくなる。手数料の安さを売りにする「アルトコイン」は無意識のうちに自らの弱みを宣伝しているようなものだ。
ビットコインの手数料が「高い」という批判の背景には、ビットコインの主用途は価値貯蔵手段ではなく交換手段であるべきという思い込みがある。第3部で説明した通り、これは本末転倒だ。ビットコインは価値貯蔵手段として広く普及して初めて交換手段として通用するようになる。それに、ビットコインの交換手段としての利用に伴う機会費用が適性水準に下がる頃には、送金の大半はビットコインネットワークから手数料の安い「セカンドレイヤー」に移行しているだろう。19世紀の金本位制時代、金取引では金そのものではなく、銀行が発行する金の所有証明書である約束手形が売り手から買い手に移転された。金現物の輸送費が非常に高かったためだ。ライトニングネットワークのようなセカンドレイヤーはこの約束手形に相当するものを提供する。しかし、銀行の仲介が必須な約束手形とは異なり、ライトニングネットワーク上での送金に銀行のような第三者機関は介在しない。しかも、送金手数料も極めて安い。ライトニングネットワークはビットコインにとって重要な技術革新である。今後、開発と普及が進むにつれて、その重要性は広く認知されるであろう。
アルトコインとの競争で価格は下がる
ビットコインはオープンソースソフトウェアであるため、誰でも自由にソースコードを複製、改変して類似ネットワークを構築できる。実際、この数年間で膨大な数のビットコインの模倣ネットワークが生まれた。完全複製のライトコイン、複雑な契約を作成、自動執行するための分散コンピュータシステムを目指すイーサリアムも模倣ネットワークである。投資家目線でよくあるビットコインに対する批判に、最新技術を採用した高機能な類似ネットワークが容易に作れるなら、ビットコインは今の価格を維持できないというものがある。
この批判が的外れな理由として「ネットワーク効果」が挙げられる。ビットコインの発明によって、それまで存在しなかった暗号資産という市場が生まれた。当然のことながら、市場を切り開いた最初の暗号資産であるビットコインは、後続の模倣コインとは比較にならないほど大きな市場シェアを持つ。この支配的シェアがネットワーク効果の源泉である。そのため、模倣コインはネットワーク効果を持たない。ネットワーク効果とは、既に多くの人に利用されているものは、そうでない類似品よりも利用価値が大きいことを指す。ネットワーク効果はビットコインの特徴、いや、ビットコインそのものである。ネットワーク効果を持つ技術にとって、それは最重要資産とも言える。
ビットコインのネットワーク効果には、流動性、保有者数、開発者コミュニティ、ブランド認知がある。国家を含む大口投資家は流動性を非常に重視する。流動性が低いと、自らの取引が相場を動かしてしまい、迅速な取引ができないからである。優秀なソフトウェア開発者は最も優秀な開発者が集まるコミュニティに参加する。すると、それが呼水となり、他の優秀な開発者の参入が相次ぐという好循環が生まれ、コミュニティはさらに強化される。ブランド認知は自己強化的性質を持つ。模倣コインは差別化のために常にビットコインに言及しなければならず、結果としてビットコインのブランド認知向上に貢献する。
フォークコインに代替される
上記のように、単にビットコインソフトウェアを複製して新しいネットワークを作る他に、2017年にはソフトウェアだけでなく、(ブロックチェーンとして知られる)過去の取引履歴まで丸ごと複製する「フォーク」が流行った。複製したビットコインブロックチェーンを任意の時点で分岐して新しいネットワークを作るのだ。単にソフトウェアを複製したネットワークはいかにコインを広範に配布するかという問題に直面するが、フォークはこの問題を解決した。
フォークの中でも、ビットコインに最も大きな影響を与えたのが、ビットコインキャッシュとして知られるネットワークが生まれた2017年8月1日のフォークだ。このフォークでは、フォーク前日にビットコインを保有していた人に対して、保有するビットコインと同量のビットコインキャッシュが配布された。ビットコインキャッシュ支持者は数は少ないものの声が大きく、手を替え品を替えビットコインのブランド力を奪おうとした。ネットワークにビットコインキャッシュという名を冠したり、暗号資産市場の新規参入者をターゲットにビットコインキャッシュこそが「本物」のビットコインである訴えるキャンペーンを実施した。しかし、彼らの目論見が失敗に終わったことはビットコインキャッシュの時価総額から明らかだ。ただし、ビットコインブロックチェーンをフォークした競合ネットワークがビットコインを時価総額で凌駕し、代替する可能性はゼロではない。ビットコイン投資をするなら、このリスクを認識しておくべきだ。
これまで、ビットコインとイーサリアムは多くのフォークを経験してきた。この経験から明らかになった重要な事実は優秀な開発者が集まる活発なコミュニティを持つネットワークが時価総額をほぼ総取りすることだ。ビットコインは新しい貨幣であると同時に、保守と改良が不可欠なソフトウェアが支えるコンピュータネットワークでもある。開発者コミュニティが貧弱でスキルの低い開発者しかいないネットワークが発行するトークンに投資することは、マイクロソフト社の優秀な開発者のサポートを受けられない海賊版ウィンドウズを買うようなものだ。2017年のフォークで明らかになったことは、最高水準のスキルと経験を持つ暗号学者とコンピュータサイエンティストはビットコインソフトウェアの保守、改良に使命感を持って取り組んでおり、ビットコインを模倣したアルトコインは眼中にないということだ。
ビットコインに関するリスク
メディアや経済学者によるビットコイン批判の大半は貨幣についての誤った知見に基づく誤解である。しかしながら、ビットコインには重大なリスクがあることも事実だ。ビットコイン投資はこうしたリスクを理解した上で行うべきである。
プロトコル欠陥
ビットコインプロトコルやプロトコルの基礎となる暗号学に欠陥が見つかる可能性はゼロではない。また、量子コンピュータの実用化で演算能力が飛躍的に高まると、暗号が破られてビットコインの安全性が保てなくなる可能性もある。こうした可能性が現実のものになれば、ビットコインの信用失墜は避けられない。サトシ・ナカモトがビザンチン障害を本当に克服したのか優秀な暗号学者でさえ確信が持てなかったビットコイン誕生当初、このリスクは非常に高かったが、深刻な欠陥はすでに改修されている。それでも、プロトコルリスクはビットコインの潜在リスクとして常に意識しておくべきだ。
取引所の閉鎖
これまで、政府によるビットコイン禁止の試みは全て失敗に終わっている。これはビットコインネットワークの分散性のおかげである。しかし、ビットコインと法定通貨を交換する取引所は極めて中央集権的であるため、政府から閉鎖を命じられれば従わざるを得ない。もし取引所が閉鎖された場合、あるいは銀行が取引所との取引を打ち切った場合、ビットコインの貨幣化プロセスは完全に止まらないまでも、深刻な影響を受ける。OTCブローカーや(localbitcoins.comのような)分散型市場も流動性を提供するが、中央集権型取引所に比べれば微々たるものだ。流動性が十分でなければ、価格形成プロセスが阻害される。
取引所は閉鎖リスクを回避するために、規制の緩い国に拠点を移すことができる。バイナンスはもともとは中国で開設されたが、中国政府による業務停止命令を受けて日本に移った(その後、マルタに移動、現在は不明)。ビットコインを過度に警戒する国がある一方、将来インターネットのような重要インフラとなる可能性のあるビットコインを保護することは得策だと考える国もある。取引所を厳しく規制する国は、そうでない国に重要産業となり得る分野で将来大きな遅れをとることになる。
世界中の政府が協力して取引所を一斉閉鎖しない限り、ビットコインの貨幣化プロセスが完全に止まることはない。ビットコインの普及が進むにつれ、ビットコインネットワークの完全停止はインターネットを停止するのと同じくらい難しくなる。しかし、ビットコインネットワークが停止する可能性がゼロではないことは、ビットコイン投資のリスクとして認識しておくべきだ。第3部の国家参入の項で説明したように、政府はどの国にも属さない検閲耐性のあるデジタル貨幣が金融政策に及ぼす脅威にやっと気づいたところである。政府が強硬手段に訴えるのが先か、ビットコインが社会に根づき政府による強硬措置の効果がなくなるのが先か、現時点で答えはない。
代替性の低下
ビットコインブロックチェーンは全世界に公開されており、誰でも自由に過去の取引を閲覧できる。そのため、政府が取引記録を分析し、非合法活動に使用されたビットコインを「汚れた」ビットコインに指定することも考えられる。ビットコインはプロトコルレベルで検閲耐性があるため、ビットコインネットワーク上で汚れたビットコインの送金が拒否されたり差し止められることはない。しかし、もし政府が取引所や店舗に対して汚れたビットコインの受け取りを禁じる場合、汚れたビットコインの価値がそうでないビットコインより大幅に低くなる可能性がある。そうなると、ビットコインは貨幣財にとって不可欠な代替性を失う。
ビットコインの代替性を維持するには、プロトコルレベルでの取引秘匿性の改善が必須だ。モネロやZキャッシュは秘匿性が高く、プライバシーコインとも呼ばれる。ビットコインで同等の秘匿性を実現するには、技術が複雑になり効率が低下するというトレードオフが生じる。貨幣としての使い勝手を損なうことなくプライバシーを強化できるか、現時点ではまだわからない。
結論
ビットコインはコレクションアイテムから価値貯蔵手段への進化途上にある初期貨幣である。国家に依存しない中立な貨幣財であるビットコインは19世紀の金本位制時代の金のような国際貨幣となる可能性を持つ。国際通貨としてビットコインが普及する可能性、これこそが私がビットコインに強気にならずにはいられない理由であり、サトシ・ナカモトのビジョンでもある。サトシは2010年にMike Hearnに宛てたメールで述べている。
国際貿易決済の一部にでも使われることが想像できれば、ビットコインは全世界に2100万しか存在しないのだから、1ビットコインの価値はもっと上がると思うだろう。
天才暗号学者で、サトシが初めて送金したビットコインの受取人でもあるHal Finneyは、ビットコインソフトウェアの最初の実用版のリリース後、同様のことをさらに具体的に語っている。
ビットコインは成功し、世界中で利用される主要決済システムになると思う。そうなったら、ビットコインの時価総額は世界の総資産と並ぶだろう。私が調べたところ、世界総資産は現時点で1〜3京円。ビットコインは2100万しかないのだから、1ビットコインの価値は約10億円になるだろう。
たとえビットコインが貨幣の3機能を果たす完全な国際貨幣にはなれない場合でも、国家に依存しない価値貯蔵手段として金と競合するようになれば、現在価格にはまだ大きな上昇余地がある。地表に現存する金供給量の時価総額(約800兆円)にビットコインが追いつくと、1ビットコインは約3800万円となる。第2部で見たように、優れた価値貯蔵手段の8つの特徴のうち、ビットコインは実績以外の全てで金に勝っている。時間の経過とともにリンディ効果は大きくなるため、実績という金の唯一の優位性は低下する。今後10年でビットコインが金の時価総額に並び、上回るという予測はあながち非合理的ではない。ただし、これは金の時価総額が主に金を価値貯蔵手段として保有する中央銀行の需要で支えられているとの前提だ。ビットコインが金の時価総額を上回るには、ビットコイン市場への国家参入が必須である。欧米の民主主義国家がビットコインを保有するかは分からない。不幸なことだが、最初にビットコイン市場に参入するのは強権国、独裁国になる可能性が高い。
もし国家が参入しなくても、ビットコインに強気にならずにはいられない理由はある。一般投資家と機関投資家が国家に依存しない価値貯蔵手段として使う場合に限っても、現時点でビットコインはまだ普及曲線の初期、いわゆる、「アーリー・マジョリティ(初期多数採用者)」の段階にある。「レイト・マジョリティ(後期多数採用者)」と「ラガード(採用遅滞者)」の参入は数年先の話だ。一般投資家、特に機関投資家の参入が増えれば、ビットコイン価格が1000万円から2000万円になることも当然あり得る。
ビットコインを所有することは、世界中の誰もが参加できる極めて稀な非対称な賭けだ。コールオプションと同じで、投資家のダウンサイドリスクは1倍に限られている一方、潜在的アップサイドは現時点でもまだ100倍以上ある。ビットコインは史上初のグローバルバブルであり、世界中の人々が政府の愚かな経済政策から自己資産を守りたいと強く願うほど、バブルの規模は拡大する。ビットコインは中央銀行の愚策が招いた2008年の世界的金融危機から不死鳥の如く生まれた。
ビットコインの影響は経済金融分野に止まらない。国家に属さない中立な価値貯蔵手段の台頭は地政学にも多大な影響を与える。供給操作ができないインフレとは無縁の国際準備通貨が存在することで、政府は運営資金をインフレに頼ることができなくなり、資金源を税金にシフトせざるを得なくなる。増税は国民の受けの悪い。政府は国民が痛みに耐えられる範囲内での政権運営を強いられ、最終的には規模と機能の縮小を余儀なくされるだろう。さらに、国際貿易決済も1960年代にフランス大統領シャルル・ド・ゴールが主張したように特定国が過度な特権を持たない形態に転換するだろう。
国際貿易は(世界大戦という)世界的不幸が始まる以前のように、特定国の状況に左右されない、誰もが正当性を認める貨幣を基盤とすべきである。
50年後、ビットコインはその基盤になっているだろう。