Gresham's Law
2,100 sats
グレシャムの法則は、「悪貨は良貨を駆逐する」ことを指します。つまり、2つの通貨が併存する社会に暮らす人は、減価し続ける悪貨を先に使い、価値を維持する良貨を手元に残します。したがって、市場に流通するのは日常の取引に使われる悪貨が圧倒的で、良貨は貯蓄や長期投資の手段として退蔵されます。
ビットコインと米ドルの両方を保有する人で考えてみましょう。モノやサービスの購入には、減価し続けているドルを使うべきです。ビットコインを使ってしまうと、将来ビットコイン価格が上昇したときに、購買力上昇の恩恵を受けられなくなるからです。ビットコインが交換手段としてよりも先に価値貯蔵手段として普及したのは、このためです。
グレシャムの法則が最も顕著に現れるのが、政府または中央銀行が通貨の価値を法令で定めたり、外貨にペッグ(外貨と自国通貨の比率を固定すること)する場合です。1965年にアメリカ政府は50セント硬貨の銀含有量を90%から40%に削減すると同時に、含有量に関わらず、新旧硬貨を同価値とする法令を定めました。この結果、銀含有量90%の硬貨の大半が銀抽出のために溶かされたり、額面よりも高く売れる海外に輸出されたりして国内市場から姿を消しました。
「純金は全て国外に流出してしまいました」1558年、トーマス・グレシャム卿が、エリザベス1世に通貨切り下げの不可避な結末を説明した言葉です。
グレシャムの法則は、政府による貨幣の供給を介した価値操作が経済に与える悪影響を説明しています。ヘンリー8世は銀貨を改鋳して銀含有量を下げたにも関わらず、法令により金貨との交換比率を維持しました。これは金貨を過小評価する法令のない、金貨がより高く売れる海外への良貨の流出を招き、悪貨だけが残ったイギリスを窮乏させました。
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