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アルトコインに対するアンチテーゼ


    倫理的見地からのビットコインマキシマリズム賛成論

    Category ビットコイン ≠ クリプト Tag 初級 Time 9分

    本記事は Bitcoin Magazine の編集者で Kraken の寄稿者でもある Pete Rizzo 氏が Forbes に寄稿した「Against Cryptocurrency: The Ethical Argument for Bitcoin Maximalism」(2021年9月29日公開)を @akipponn さんが翻訳、@TerukoNeriki が一部加筆修正したものです。

    本記事はビットコイン支持者とアルトコイン支持者の間にある分断を埋めることを意図したものなので、まずは両者の合意点から見ていくのが妥当でしょう。

    ビットコインの発明を機に、デジタル貨幣の利用が広がりました。ビットコインは方針の違いによる派閥対立とコミュニティ分裂や、ビットコインを模倣、改変したアルトコインの大量出現にも関わらず、継続的なコード改良により進化を続け、現在まで最大のネットワーク規模と最高の市場評価を誇るデジタル貨幣の王座の地位を死守してきました。

    とは言うものの、ビットコイン誕生から十数年を経た2021年の今でさえ、ビットコインとは何なのかという質問に答えられる人は少数です。ましてや、ビットコインに対する優位性を訴え、ビットコインに取って代わろうとする何千ものアルトコインが何なのかを説明できる人はさらに限られます。

    「ビットコインは国家に依存せず、支配もされない国際貨幣であり、発行の透明性、公平な可監査性、そして総発行量の有限性を特徴とする」というのがビットコインについての一般的認識です。

    事実、こうした透明性、公平性、有限性といった特徴が人権自由主義的価値の擁護に適していたことで、ビットコインとは普遍的な財産権のコード化であると認識が広がり、普及に弾みがつきました。

    これはビットコイン賛成論の重要な論拠であり、本記事で矮小化するつもりは毛頭ありません。その上で、本記事は「ビットコインって一体何?」の次に出てくる疑問「ビットコインと同様の特徴を持つとされるアルトコインがたくさんあるにも関わらず、人権や財産権の擁護という点でビットコインに勝るアルトコインはないとビットコイン支持者が主張する根拠は何なのか?」に答えます。

    さらにもう一歩踏み込んで、1)ビットコインとアルトコインは異なる経済システムであることが事実だとしたら、具体的にどのような違いがあるのか、2)両者ともに新しいアプリケーションや取引を可能にするのであれば、そもそも利用者は両者の違いを気にする必要があるのかという2つの疑問にも答えます。

    以下で詳述しますが、ビットコインとアルトコインが実は財産権や金融プライバシーについて対照的な見解を示している点はあまり知られていません。

    両者の立ち位置の違いが意味するところを市場関係者はきちんと認識すべきです。ビットコインとアルトコインの普及が今後ますます進めば、彼らの見解が数十億人とは言わないまでも数百万人の両者に対する評価を左右することになるのですから。

    派閥の言い分

    ビットコインとアルトコインの間の本質的分断を説明する前に、まずはビットコイン支持者とアルトコイン支持者、それぞれの主張を理解しておく必要があります。

    私はビットコインとアルトコインについて10年近く研究してきました。暗号通貨をめぐる主なイデオロギーはそれぞれにバリエーションがあるものの、以下3つに分類できると考えています。

    1. ビットコインマキシマリスト
      どの国にも属さない国際中立的貨幣制度の定義を満たすのはビットコインだけであり、この定義は経済学とコンピューターサイエンスの両方に裏付けられると信じる人たちです。ビットコインのローンチと外部からの資金調達に頼らない自律運営を可能にした状況は再現不能であり、アルトコインが採るローンチ方法はビットコインの革新性である経済的稀少性を損ねると考えています。アルトコインの存在を否定しない人も中にはいますが、市場におけるビットコインの独占的シェアを大前提としています。(ちなみに著者はビットコインマキシマリストです。)
    2. 暗号通貨(クリプト)信者(以下クリプト信者)
      このグループに属する人による、いわゆる暗号通貨エコシステムにおけるビットコインの評価はまちまちです。ビットコインの地位や影響力は支配的と言う人もいれば、限定的あるいは皆無と言う人もいます。アルトコインについての評価も割れますが、共通点として既存の貨幣制度に代わる選択肢を提供するという意味で暗号資産の大半を肯定的に捉えていることが挙げられます。独自機能を実装して特定ユースケースに特化するアルトコインは、ビットコインと競合する新種のプログラム可能な通貨になり得ると信じています。実際、今の暗号通貨市場には無数の暗号通貨が存在します。そして、この現状こそ、アルトコインがビットコインと競合し得る証拠であり、アルトコインの価値提案の評価も市場に委ねるべきと考えています。
    3. ビットコイン否定派
      貨幣発行体は国家しかあり得ず、民間が貨幣を発行するなどもっての外で、ビットコインはあくまでもコンピュータサイエンス分野における発明であり、経済学とは無関係だと考える人たちです。国民が政府に権限を委ねる民主主義国家では、政府が貨幣発行権(供給量の決定や価値切り下げ判断を含む権利)を独占することは公共の利益に叶うと信じています。

    上記分類に問題はないと仮定して、以下、本題であるビットコインマキシマリストとクリプト信者の違いを検証します。両者の違いは非常に興味深いものであるにも関わらず、大半の人が理解していないというのが現状です。

    ビットコインマキシマリストもクリプト信者も国家通貨に代わる通貨の必要性を強く感じている点は共通しますが、ビットコインとアルトコインの目的と成功の定義については意見が割れます。

    クリプト信者は法定通貨の代替通貨が満たすべき基準の存在を本能的に否定する傾向が見られます。この傾向は基準が市場の選択肢を否定するような場合は特に顕著です。

    一方のビットコインマキシマリストはネットワーク規模、貨幣適性、ネットワーク始動時のパラメータなどを引き合いに出してアルトコインを否定します。しかし、彼らの言うアルトコインがビットコインに勝てない理由(あるいはアルトコインがビットコインと競合し得ることを市場が証明できない理由)は新規参入者の理解を超えています。

    言うまでもなく、このような議論は両者の本質的分断、すなわちビットコインとアルトコインの市場アプローチ法の違いが、両者が利用者に提供する保証を全くの別物にしているという事実には向き合っていません。

    意見の分岐点

    分断の説明に入る前に、ビットコインを貨幣たらしめる特性をおさらいし、この特性がソフトウェアとしての暗号通貨に独自性を与えた経緯を検証しましょう。

    まず大前提として、ビットコインもアルトコインも(国家という枠組みの外で運営を続けるために)非中央集権性が維持されること、(進化し続けるために)定期的に更新されることが求められます。そして、このソフトウェア更新というプロセスの性質上、更新に際しては利用者権利に配慮する必要があることは初期の頃から認識されていました。

    具体的に言うと、ソフトウェアとしてのビットコインとアルトコインの更新には、2つの選択肢しかありません。新ルールの導入(新バージョンは後方互換性を欠く)、あるいは既存ルールの変更(旧バージョンも引き続き利用可能とし、新バージョンのインストールは利用者の選択に委ねる)です。

    どちらの選択肢にも、互換性のないソフトウェアと暗号通貨を生むリスクがあります。このリスクの捉え方と管理法にビットコインマキシマリストとクリプト信者の違いが出ます。

    ビットコインマキシマリストは、この二者択一をビットコインを定義する特徴、すなわち貨幣と貨幣の規定供給量に対する利用者権利を保証する手段とみなし、ゆえにブロックチェーン分岐リスクを最小化するロードマップを選びました。(これによりソフトウェア更新は利用者の選択に委ねられることを保証します。)

    一方のクリプト信者は後方互換性を欠くソフトウェアに寛容で、変更も積極的に取り入れます。利用者には貨幣を好きなように使う権利があると考え、規定供給量は権利というより単なる特徴とみなしています。これは彼らのリスク管理法にも反映されています。

    実際、この見解はイーサリアムの考案者 Vitalk Buterin 氏の発言に如実に現れています。彼はビットコインのロードマップを「強制的」と批判します。少数の頑固なビットコインマキシマリストが、新機能を備えた貨幣をこれまでにない方法で使ってみたいと願うビットコイン利用者の自由(自分のお金をに好きなように使う権利)を侵害しているとButerin 氏は考えているのです。

    公の場で議論されることはありませんが、クリプト信者は利用者の財産権を市場に委ねるという非常に特殊な考えを広めようとしているのです。

    言い換えると、クリプト信者は暗号通貨は利用者の多数派が望む変更を反映すべきで、さらにこの「多数派」は他の利用者の権利剥奪を含むあらゆる事項の決定権を持つと信じています。

    Buterin 氏お気に入りの暗号通貨分裂対策にも、この考えが透けて見えます。 「賛否が分かれる変更を加えたいなら、実装するかの判断は市場に委ねるべきです。」

    クリプト信者は、多数派の決定が気に食わない利用者は別の暗号通貨を使うか、新たな暗号通貨を発行すればよいと言います。代替通貨が存在する限り、少数派の財産権は守られるというのが彼らの主張です。

    2つのイデオロギーが暗示するもの

    クリプト信者は嫌なら他の暗号通貨を使えばよいと言います。つまり、少数派は多数派の決定に甘んじるか、他のネットワークに乗り換えるしかありません。これは貨幣支配権限を現在の「国家」から「個人」に回帰させるのではなく、「市場」に移管することを意味します。重大な論点ですが、これまで議論されたことはほとんどありません。

    ビットコインは利用者の貨幣そのものへの権利および規定供給量に関する権利に加えて、多数派が望むものの自分には不要な変更を拒否する権利、すなわち多数派に反対する権利も保証します。

    一方のイーサリアムとその類似システムでは、変更の是非は多数決で決まります。実際、プルーフ・オブ・ステーク(PoS)を採用するブロックチェーンと分散型金融(DeFi)アプリケーションの多くは、変更が多数決で決まることを売りにしています。

    要するに、アルトコインは法定通貨と同じで、利用者による異議申し立ては認めません。アルトコイン利用者の財産権は市場裁量に委ねられます

    ビットコインは設計上、利用者の選択の自由が保証され、多数派の決定に財産権が侵害されることもありません。これらが保証されるのは、無数に存在する暗号通貨の中でもビットコインだけです。実際、ビットコイン利用者の中には多数派の支持を得た変更を有効にするソフトウェア更新を拒否し、後方互換性を持つ旧バージョンを使用し続ける少数派がいます。

    2020年の大型アップデート「Taproot」を例に見てみましょう。多数派の支持を得て Taproot を有効にする新バージョンがリリースされました。しかし、ビットコインを価値貯蔵手段として利用する人の中には、Taproot が可能にするスマートコントラクトは不要な機能だと考える人もいます。もし彼らが新バージョンへの更新を拒否しても、旧バージョンのままビットコインネットワークに残り、多数派が持つビットコインと同価値のビットコインを引き続き保有できます。更新を拒否した少数派が保有するビットコインが減価、没収されたり、他のネットワークへの移行を余儀なくされることはありません。

    これはアルトコインの更新に関する方針とは全く異なります。アルトコイン利用者は多数派が支持する更新を受け入れなければ、財産権を侵害される可能性があるのです。

    何が言いたいかというと、アルトコインに共通する問題は、価値の貯蔵や移転といった性能ではなく、ソースコードだけで暗号通貨を多数決制の法定通貨制度と異なる制度と位置付けようとする虚偽の主張にあるということです。

    もちろん、アルトコイン利用者の命運は私が思うほど悲惨ではないかもしれません。クリプト信者は意思決定を市場裁量に委ねるアルトコインは革新的で、法令を根拠に政府が運営する経済より優れているとの従来からの主張を変えることはないでしょう。

    少なくとも、クリプト信者が目指す暗号通貨とその経済圏は、ビットコインとビットコイン経済圏とは全くの別物であることだけでも認識してくれることを願うばかりです。

    この違いをクリプト信者がきちんと認めなければ、ビットコインとアルトコインが利用者、さらには世界経済に提供する保証の違いについて率直な議論を始めることすらできないのですから。

    著者 Pete Rizzo について

    暗号通貨分野で最長キャリアを持つライターの一人で、2013年よりビットコイン専門ジャーナリストとして活躍中。現在は Bitcoin Magazine 編集者を務めるかたわら暗号通貨取引所 Kraken にも記事を寄稿。ビットコインの歴史を研究し、その発展に大きな影響を与えた人物や出来事を整理、紹介する活動にも従事。CoinDesk 創業時にライター兼編集者として参加、2014年から2019年にかけては編集長を務め、Blockstream 最高経営責任者の Adam Back 氏、TechCrunch 創設者の Michael Arrington 氏、Binance 最高経営責任者の Changpeng Zhao 氏といった業界有力者とともにイベント登壇した経験も。

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