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ビットコインマイニングの真のコスト


    ビットコインマイニングの真のコストを評価するには、法定通貨制度の隠れたコスト、さらにはビットコインがエネルギー消費と引き換えに社会に提供する価値を考慮する必要がある

    Category ビットコインの基礎知識 Tag 初級 Time 3分

    本記事は Stephan Livera Podcast のホスト Stephan Livera 氏著「The True Costs (and Unseen Benefits) of Bitcoin Mining」(2018年11月20日公開)を @nikobitcoin さんが翻訳、@TerukoNeriki が一部加筆修正したものです。

    昨今の主要メディアでは、ビットコインマイニングが引き起こすエネルギー問題がよく取り上げられている。ビットコインマイニングの膨大なエネルギー消費が気候変動を加速するとの懸念を示すものが大半だが、中には貨幣制度に許容されるべき消費量を上回るとして、ビットコインが「地球上のエネルギーを食い尽くす」可能性に言及する記事もある。ビットコインを含む多くの暗号資産が演算処理に多大なエネルギーを要するのは事実だ。しかしながら、暗号資産の価値は、その生産に高いコストが伴うこと、それゆえに希少性を持つことに由来する。にも関わらず、ビットコインに懐疑的な層は、この価値の源泉である生産コストを理由に、暗号資産を本質的に無価値と切り捨てる。

    実は同じような議論が金をめぐって数10年前に交わされている。金否定派は金の採掘や保管にかかるコストを理由に挙げ、法定通貨制度の経済合理性を力説した。法定通貨制度への移行に反対したRoger Garrison は、論文 The “Costs” of a Gold Standard の中で「金本位制と法定通貨制度を資源コストのみで比較するのは妥当でない」と主張し、法定通貨制度が社会に負担を強いる見逃されがちなコストとして以下に言及した。

    • 貨幣発行権を巡る政治的な争いに起因するコスト
    • 利益団体が自らの利益のために貨幣発行機関を政治的に操作するためのコスト
    • 貨幣発行権の乱用がもたらすインフレーションと、インフレの副作用としての誤投資(不適切な資源配分)
    • 企業が各国の金融政策や為替動向の予測に費やすコスト

    そもそも、ビットコインは何故そこまで多大なエネルギーを使う演算能力を必要とするのか? Nick Szabo はブログ記事 Money, Blockchains, and Social Scalability において、この質問に以下のように答えている。ビットコインは偽造、インフレーション、盗難に対する高い耐性を持つ。これらの特性はビットコインの生産が困難なことと、プルーフオブワークの非対称性(規定要件に合うハッシュを見つけるのは困難な一方、他者が見つけたハッシュが要件を満たしているかの検証は容易なこと)が可能にしていると説明した上で、ビットコインは消費するリソースを上回る価値、すなわち、「社会の拡張性」を提供すると主張した。

    法定通貨制度と、この制度が可能にするインフレのせいで社会が被るコストは上記に限らない。法定通貨制度では、政府が著しく低利で国債を発行できる。こうして調達した資金が軍事や福祉など高コストな上に国民利益にかなわない多くの政策の財源となっている。本来なら、国民に政策の費用対効果を説明し、増税で財源を確保するのが道理である。しかし、政治家は国民受けの悪い増税を避け、インフレーションという国民が負担を感じにくい形で徴収するのである。

    ビットコインのエネルギー消費を正当化する議論は、金本位制あるいはビットコイン以外の暗号資産にも適用可能だろうか?できないことはないが、金本位制には銀行などの保管機関に金が集中するリスクや政府による押収のリスクがあり、歴史的にも良い選択ではないことが実証されている。では、他の暗号資産ではどうだろう? Carl Manger は著書 On the Origins of Money で、貨幣は通常、高い流動性と市場性を持つ単一財に収束すると述べている。これを踏まえると、金や他の暗号資産が貨幣になることに賭けるには、これらが貨幣市場でビットコインに勝てるとの確信を持つ必要がある。

    将来は予測不可能で、ビットコインや他の暗号資産が国際貨幣市場で競争を勝ち抜くかは誰にもわからない。ただ、仮にビットコイン本位制が実現した場合、ビットコインマイニングの真のコストと、多くの人が見過ごしているビットコインが社会にもたらす恩恵、例えば、政府の規模と権限の大幅な縮小、軍事国家や福祉国家の減少、部分準備銀行制度が引き起こす景気循環とそれに起因する経済損失の回避などを踏まえた、より総合的な評価がなされるべきだ。Garrison 曰く「突き詰めると、いかなる行動、コモデティ、組織に付随するコストとは機会費用である。つまり、特定の行動、コモデティ、組織を選択した結果、諦めることになった行動、コモディティ、組織のことだ。機会費用こそが、考慮すべき本当のコストなのである。」

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