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最強エリート集団がビットコインを無視し続ける理由

    名門ビジネススクールでMBAを取得し、投資銀行や戦略コンサルで高報酬を得る勝ち組エリートは、なぜビットコインを受け入れられないのか?

    @fuuuumin314
    Category ビットコインの基礎知識 Tag 初級 Time 15分

    本記事は @Croesus_BTC 氏著「 Why The Yuppie Elite Dismiss Bitcoin 」(2020年8月21日公開)を @fuuuumin さんが翻訳、 @TerukoNeriki が 一部加筆修正したものです。


    業を煮やした私は、「ビットコインの価格が100万ドルになる確率はどれくらいだと思う?」とぶっきらぼうに尋ねました。友人は自信満々に「0.001%」と答えました。私は笑いながら「80%だね」と返し、「ビットコインについての調査に何千時間も費やした私と、全く費やしていない君。情報の非対称性があると思わないか?」と続けました。彼は「あるいは単なる保有効果かもね」と茶化しました。

    彼の名はダンです。ビジネススクールで出会い、今でも私のよき友人です。GMAT(訳注: MBAの入学適性試験)で800満点中780点を取った彼は、ほとんどの場で最も賢い人とみなされます。私たちは業界有数の経営コンサルティング会社で一緒に働いた後、全米トップクラスのMBAプログラムで学び、卒業後は、アメリカで住みたい街ランキング1位の都市で高給職に就きました。ビジネススクール時代の友人は皆、ダンのような経歴の持ち主です。学歴社会のアメリカで、常に先頭を走り、上がり続ける期待値に応え続けた子どもたちが社会に出て、誰もが羨むエリート街道を順調に歩んでいます。

    そんな彼らは、揃ってビットコインに批判的です。これは興味深いと同時に歯がゆい現象です。エリートではない友人は、ビットコインこそが21世紀の最も重要な資産であると熱く語る私に耳を傾けてくれました。エリート人生を歩んできた友人が、ビットコインをあからさまに嫌悪し、敵意に近い姿勢を貫くのは一体なぜでしょうか?

    答えは複雑で、いくつかの要因が挙げられます。下図はこの問いに答えようとした一例です。まずはこの図の意味を解読しましょう。


    Murad Mahamudov
    (注釈: 知能指数分布。知能指数が140以上の上位2%と70以下の下位2%の人はビットコイン価格が25万ドルになると予測する一方、残りの大多数は25万ドルなんてあり得ないと彼らを嘲笑っている。)

    これはビットコイナーの多くが認識する現象を巧みに可視化しています。その現象とは、ビットコインの爆上げを予測するのは、上位2%の賢者だけでなく、下位2%の愚者もいることです。それだけではありません。この図は、比較的高学歴で知的な友人や家族がビットコインを嘲笑し、否定し続ける現象も表現しています。ただ、この図はあまりにも事象を単純化しています。ダンをはじめとするビジネススクールの同期よりも、私の方が賢いなんて思いませんし、同期の誰ひとりとしてビットコインマキシマリストではありません。明らかに、他にも要因があるはずです。
    (訳注: ビットコインマキシマリストとは、ビットコインが史上最強の貨幣制度となることを信じる人。詳しくは、不可欠なビットコインマキシマリスト参照。)

    何ヶ月も熟考し、完璧ではないものの、より説得力のあるフレームワークを思いつきました。



    (注釈:縦軸は知能指数、横軸は現行制度に対する信頼。凡例のオレンジはビットコインマキシマリスト、青はビットコイン爆上げ信者。)

    まず、Murad氏がビットコインの爆上げを予測する25万ドル信者グループに分類した人たちを、さらにビットコイン爆上げ信者とビットコインマキシマリストに二分します。上図左側に属する爆上げ信者は、単に過去の値動きから将来の暴騰を予測しています。他方、上図右側のマキシマリストは、時間をかけて入念に調査と考察を重ね、ゲーム理論に基づき、中央銀行による紙幣増刷の不可避な結果としてのビットコイン価格の継続的な上昇、4年毎の半減期を介した供給ショックを引き金とする予めコードに仕込まれた価格上昇メカニズム、絶対的希少性を有する価値貯蔵資産に特有の勝者総取りという特性を理解し、いわゆる「ビットコインマキシマリズム」という境地に至った人たちです。

    Murad氏の知能指数のみに基づくフレームワークは、爆上げ信者に関しての説明としては適切かもしれませんが、ダンのようなイケてるエリートのロジックを説明できません。彼らとビットコインマキシマリストの決定的な違いを考えたとき、政治信条が思い浮かびました。例えば、自由主義者か、トランプ支持者か、米国憲法修正第2条で認められている武器を持つ権利の賛否、ブラック・ライブズ・マターに対するスタンスです。そして、こうした政治信条の違いが、より深い信条の違いから生じていることに気づきました。すなわち、現行制度をどの程度信頼しているかです。 ビットコインという迷宮に入り込んだ誰もが経験するように、私も今では政治全般には幻滅しています。しかし、ビットコインに出会うまでは一貫して民主党支持者でした。そのため、リベラル、自由主義について語る資格はあると思います。以下、私の見解です。


    自由主義者は制度が適切に設計され、制度執行者が有能かつ寛大であれば、制度が機能すると信じています。私のビットコインマキシマリストへの旅の終着点は、この世界観との決別でした。長年の信念を自ら否定する痛みを伴う旅でした。旅の過程では、中央銀行の金融政策と(国民に不利益を及ぼすと知りつつ通貨膨張という)安易で危険な政策運営について知りました。

    余談ですが、私が卒業した世界ランキングトップのビジネススクールでは、中央銀行の実態については何も教えてくれませんでした。ただ、これが意図的あるいは悪意によるものだとは考えていません。100年前に利己的な政府がケインズを支援した結果にすぎないと捉えています。つまり、私の教授たちはケインズ主義者から学び、彼らにケインズ主義を教えた教授もケインズ主義者から学んだのです。今日のビジネスリーダーや教育者たちは、政府が健全な貨幣理論の根絶に成功した結果、自分たちが発信している貨幣理論がプロパガンダであることに全く気づいていないのです。

    話を戻します。Murad氏の知能指数に基づく25万ドル信者を、現行制度に対する信頼度合いで二分した上図をもとに、以下、話を進めます。

    上図が現実の合理的な説明だと仮定すると、以下が導けます:

    • ビットコインマキシマリストズムは知能指数だけでなく、現行制度への不信感にも相関します。非常に頭がよく、かつ制度が機能不全に陥っていると確信する人は、他条件が同じでも、どちらかの資質、つまり賢いあるいは制度不信を欠く人よりビットコインマキシマリストになる可能性が高いです。
    • 爆上げ信者と制度不信の相関は弱いです。しかし、知能指数に関わらず、制度に不信感を持つことは、おそらく悪いことではありません。
    • もともと制度を信じていない人は、ビットコインマキシマリストになりやすいです。サイファーパンク、無政府主義者、自由主義者、さらには従来の政治体制に不信感を持つトランプ支持者が、ビットコインを早々に受け入れたことが良い例です。
    • 逆に言えば、制度を信頼する人がビットコインマキシマリストになるのは、ほぼ不可能です。現行制度の中で競争を勝ち抜いて成功し、制度不振とは無縁だった私がビットコインマキシマリストになる道は、決して平坦ではありませんでした。それまでの信念と、ビットコインが提起する問題との不協和に悩み、格闘し、引き返すのではなく、正面から矛盾に向き合い、最終的に葛藤を乗り越えて、世界観を一から再構築しなければなりませんでした。なんとも楽しい旅でしたが。
    • そして、みなさんが最も気になってるであろうチャート右上の白いエリアに属する人、すなわち知能指数が高く、制度が正常に機能していると信じる人が、ビットコインマキシマリストや爆上げ信者に共感する可能性は非常に低いです。これについて、以下、さらに詳しく説明します。

    チャート右上に属するのは、そう、最強エリート集団です。周囲が全員高学歴かつ有能という環境で成功するには、当然、頭がよくなければなりませんが、それだけでは不十分です。社会への適応能力、チームプレーヤーとしてのスキル、社内政治力、礼儀正しさ、好感度、そして何よりも会社への忠誠心が求められます。これらすべてを満たす人は、現行制度に全幅の信頼を置いています。有能かつ忠実で、上司や同僚からの受けが良ければ、昇進昇給という形で報われると信じています。こうした最強エリート集団をチャートにプロットすると、以下のようになります。


    (注釈:右上の点線内が典型的な最強エリート集団)

    知的かつ制度不信という2つが揃うと、ビットコインマキシマリストになる確率が高いのと同様、知的かつ制度への高い信頼感という2つが揃うと最強エリートである可能性が高いです。一口に知的と言っても程度の差はあります。それほど知的でない人が成功している場合、並外れて献身的かつ忠実な会社人間であることが多いです。

    オレンジにも青にも染まっていないチャート右上の空白を占めるのは、最強エリート集団です。彼らの常識からすると、ビットコインとは、そのうち忘れ去られる奇妙な一時的現象なのです。エリート仲間に、ビットコインを支持する人なんていませんし、爆上げ信者とビットコインマキシマリストの違いなど知る由もありません。彼らにはビットコイン支持者は、下図のように、みな同じに見えるのです。


    (注釈:右上点線内の白は選ばれたエリート。それ以外のオレンジはビットコインに騙されている凡人)

    ビットコイナーをこのように捉える彼らが、偏見を取り払って、ビットコインの価値提案を真剣に検討することはないでしょう。これは彼らにとって不幸なことです。最強エリートは最高とされる教育を受け、最高とされる職に就いています。自分たちは最高の情報に優先的にアクセスでき、情報格差の勝者側にいると思っています。自分たちは選ばれた特別な存在で、内情に通じていると信じているのです。 最強エリートがビットコインを頑なに無視し続ける裏には、こうした選民意識があります。

    このような、ある種、浮世離れした環境にいると、ごく普通の生活を「浮世離れ」と指摘されても、愚かな誤解だと切り捨てがちです。しかし、一旦そこから離れると、それまで自分がいかに傲慢で、世間知らずだったかを痛感します。エリートは同類のエリートとしか交流せず、世間とは隔絶されたバブルの中で生活しています。そのため、彼らが物事の重要性を判断する基準は、エリート仲間がそれをどう評価するかです。なにせ、最強エリート集団は内情に通じているのですから。バブルの外の庶民が何かに夢中になっていても、エリート仲間が興味を示さない限り、それは情報に疎い庶民のもので、自分たちには無関係なのです。最強エリートがビットコインを無視し続けるのも当然です。世間が大きな関心を寄せる一方で、仲間の誰1人としてビットコインが重要と言う人がいないのですから。彼らが導いた結論は、「ビットコインは何も分かっていない人たちのもの」です。

    最強エリート集団には、もう1つ特徴があります。頭がよく、世渡り上手の彼らは、何かを信じるには、その対象をまず理解する必要があります。これまで、この方法でうまくやってきたのですから、それを変える理由はありません。

    皮肉なことに、エリートがビットコイン投資に踏み切れない理由は、ビットコインの中核である「信用せずに、検証せよ」という精神なのです。私の幼なじみにヨットの船長がいます。彼の周囲では、私は最も賢い部類に入るそうです。私が彼にビットコインについて調べることを強く勧めたとき、彼はその日の夜にビットコインを買いました。私を信用し、自分で検証することなく、ビットコインに投資したのです。エリートの友人は、決してそんなことはしません。理解できないものに投資するのは賢明でないことを知っているからです。かといって、私がしたように、ビットコインを理解するために長年を費やすほどの信念も根気も彼らにはありません。


    さらに厄介なことに、ビットコインは奥が深く、ちょっとやそっとでは本質にたどり着けません。数時間リサーチしたくらいでは、過去の多数の詐欺事件の情報に警戒感を募らせるだけでしょう。膨大な情報を効率的に処理するために、ノイズを遮断する直観力を磨いてきたエリートにとって、調査開始早々、危険信号の嵐ではノイズ判定に至るのもやむを得ません。彼らは規定の枠内で考えるように訓練されてきました(にも関わらず、「型にはまらない、自由な発想」だと信じています)。数時間の調査で理解が深まるどころか、混乱し、警戒感を募らせるものが、実際には莫大なリターンをもたらす稀有な投資機会である確率は無視できるほど低いです。表面的な調査に基づいて、ノイズを遮断する最強エリート集団は、ビットコインをノイズと判定して切り捨てます。そして、エリート仲間が興味を示すものにのみ注意を払うという集団思考が働くため、一旦下したビットコインのノイズ判定が覆ることはありません。

    もちろん、ビットコインが設計通りに機能し続け、価格上昇が続けば、彼らも態度を改めざるを得ないでしょう。やがて、ビットコインを切り捨てた人は全員が、自らの過ちに向き合わなければならない時がくるでしょう。最強エリート集団には特有の力学が働いているため、彼らがビットコインの本質にたどり着くのは、他の新技術やトレンドよりも長い時間が必要かもしれません。


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